筋トレの効果を高めるには朝食を食べたほうが良い、という情報は広く知られていると思います。一方で、どのような朝食を食べると良いか、についてはあまり知られていないような気がします。
そこで今回は筋トレをされている方向けに、筋肉量を増加させるための朝食のポイントをお伝えします。
INDEX
朝食と筋トレの関係について
朝は筋肉が分解されやすい
筋肉は分解と合成を常に繰り返しながら新しい筋肉を作っています。しかし、空腹時は筋肉を分解するサイクルが早まるため、筋肉量が低下しやすくなります。
睡眠中は食事ができないため、朝は基本的に空腹です。そのため、朝食をとらないと筋肉が分解されやすい時間が長くなり、筋肉量が大きく低下してしまいます。
さらに、朝食を抜いて午前中に筋トレやワークアウトを行うと、筋肉を分解して得たエネルギーを使うことになるため、かえって逆効果となってしまいます。
朝食をとることで基礎代謝の向上・脂肪燃焼につながる
朝食には睡眠中に低下した体温を上昇させるはたらきがあります。体温が上昇すると基礎代謝が向上し、痩せやすい体質になります。
また、朝食には血糖値を上昇させるはたらきもあります。血糖値が上昇すると身体は「脂肪燃焼モード」に切り替わり、効率よくカロリーを消費できるようになります。
脂肪燃焼モードは睡眠時まで続くため、同じ3食でも「朝食 + 昼食 + 夕食」をとる人と、「昼食 + 夕食 + 夜食」をとる人の比較では、前者の方が寝ている間に分解される脂肪量が多い、という研究結果が出ています。
朝のブドウ糖不足が筋肉量の低下につながる
脳は、ブドウ糖を唯一のエネルギー源にしています。また、脳は1日中ずっと(寝ている時間も含め)ほぼ一定の速度でブドウ糖を燃焼しています。
そのため、基本的に朝はブドウ糖が不足しています。ブドウ糖が不足すると、筋肉や肝臓の中に蓄えられているグリコーゲンが分解されます。筋肉に蓄えられたグリコーゲンが枯渇してしまうと、筋肉量の低下にもつながります。
効率的に筋肉量を増やすには朝のタンパク質が欠かせない
アメリカのテキサス大学の研究結果によると、三食のタンパク質摂取量を均等にした方が、夕食に偏った量を摂取するよりもタンパク質の合成量が高くなることが分かりました。
また、早稲田大学の研究グループは、朝食でタンパク質を摂取することで効率的に筋肉量を増加させられる可能性を示唆しています。
朝食にしっかりとタンパク質を摂取することが筋力の維持・向上に効果的である、ということが研究結果により明らかになっています。
筋肉を増やすための朝食のポイント4選
必須アミノ酸をバランスよく含む食材を選ぶ
タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されます。そのアミノ酸の中には、ヒトの体内で合成できず食事から摂取しなければならない「必須アミノ酸」が9種類ほど存在します。
必須アミノ酸が1種類でも不足すると、タンパク質の栄養的な価値が低下し、筋肉を合成する効率も低下します。そのため、必須アミノ酸をバランスよく含む食材からタンパク質を摂取することが推奨されています。
必須アミノ酸のバランスは「アミノ酸スコア」で表され、アミノ酸スコアが高い食材は次のとおりです。
1日に必要なタンパク質の3分の1を朝食で摂取する
前項の通り、三食のタンパク質摂取量を均等にすることが推奨されています。朝からしっかりタンパク質をとることが、筋肉量を効率的に高めることにつながります。
厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日のタンパク質の摂取推奨量は、64歳までの成人男性で65g、成人女性で50gと設定されています。この量が筋肉量を維持するための基準値となります。
筋肉量を増やしたいという方は、筋トレの負荷により若干変動しますが、1日に「体重×1.6g」のタンパク質を摂取することで、効率よく筋肉量を増やせると言われています。たとえば体重60kgの方は、1日に96gのタンパク質を摂取できると良いでしょう。
自身の「1日にとりたいタンパク質の量」が決まれば、その3分の1を朝食でとれるように献立を考えてみましょう。
タンパク質と一緒にブドウ糖も摂取する
こちらも前項の通り、朝は体内のブドウ糖が不足しており、ブドウ糖の不足は筋肉量の低下につながります。そのため、朝食でタンパク質だけ摂取しても、吸収効果が非効率になってしまいます。タンパク質とブドウ糖をセットでとるように意識しましょう。
ブドウ糖はドライフルーツを含む果物、ジャムなどの甘味料、ごはんやパンなどの穀類、じゃがいもやさつまいもなどのいも類に多く含まれます。
特にジャムやドライフルーツを含む果物はブドウ糖を多く含みます。果物や甘いものは血糖値の急激な上昇を招くため、摂り過ぎないように注意する必要がありますが、適量であれば朝食におすすめです。
腸内環境をケアする
タンパク質を多く摂取し続けると、腸内で悪玉菌が発生しやすくなります。
悪玉菌が増えて腸内環境が乱れると、便秘や肌荒れなどの体調不調を招きます。また、タンパク質を含む栄養素の吸収率が低下するため、筋トレの効果低減にもつながります。
腸内環境を整えるには善玉菌を増やす必要があります。発酵食品には善玉菌を増やす効果が期待されているため、朝食にヨーグルトや納豆などを取り入れることもおすすめです。
また、排便を促して腸内の動きを活発化させることで、悪玉菌と善玉菌のバランスを整えることができます。排便を促すには食物繊維の摂取が有効です。食物繊維が多い食材は次のとおりです。
まとめ
適切な朝食は筋トレの効果を引き上げます。朝は時間がなかったり、食欲がなかったりするかもしれませんが、筋トレをされている方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
参考
・Dietary Protein Distribution Positively Influences 24-h Muscle Protein Synthesis in Healthy Adults
・早稲田大学プレスリリース|タンパク質摂取時間と筋量増加の関係
・Discover Japan 2023年5月号|美味しい”朝ごはん”があればうまくいく ニッポンの朝食
・厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020 年版)
・文部科学省|日本食品標準成分表2015年版(七訂)
・文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)